Powered by Blogger.
 
2018年1月15日月曜日

2018年1月15日1

年末年始ベルリン報告③ 今回の鑑賞旅のナンバーワン体験になった、ドレスデン歌劇場のコルンゴルド作のオペラ『死の都』を1/2に鑑賞。亡命ユダヤ人として、アメリカに渡り、映画音楽の世界でその才能を爆発させ、後進に影響を与えるものの、戦後クラシック音楽界は彼に冷たく(商業主義に堕したってヤツですわ)、失意の内に没した天才のオペラは、結果「こういうことがあるから人生止められないわ(意味不明)」ほどの体験でしたよ。

一言で言えば、オペラ『死の都』を中心に仕組まれた一晩の夢のような夜。そう、オペラの序曲はドレスデンという全く予備知識のない街に(本当に調べないタイプなので)電車で降り立ったときから始まっていました。タクシーでホテルに入って着替えて、化粧を直し、歩いていける距離のオペラハウスへ地図を見ながら歩き出したのですが、歴史的建造物がてんこ盛りのまるで舞台の書き割りのようなストリートには、人っ子ひとりいいないのです。

満月に照らされ、凍えるような空気の中、地図に従って曲がり角を曲がると、そこに急に現れたのは、黄色地に描かれた行進を描いた大壁画。後でこれこそが観光の目玉のひとつ「君主の行進 」ということが判明するのですが、予備知識のない目にとっては、突然空間に現れた怪物のよう。そうして、その通りを過ぎると不意に開けた大広場の向うに夢の宮殿のように浮かび上がっていたのが、オペラ劇場であるゼンパーオパー。オペラ座につきものの華やいだエントランス付近というのは全く無く、お社交っぽくない地味な人々が黙々と並んでいる列に加わって中に入ると(ここんとこもカフカだよね)、あまりにも壮麗な劇場との辻褄の合わなさに頭がクラクラしましたよ!!

コルンゴルド、爆クラ! でも紹介することが多い、大好きな作曲なのですが、一言で紹介すると、天才作曲家としてもてはやされるもユダヤ人ということでヨーロッパを終われ、映画勃興期のハリウッドで映画音楽作家として禄を食み、映画音楽の基礎を作った人。没後再評価されているのですが、この『死の都』、何か快感のタガが外れたようなとてつもない楽曲なのです。

愛妻家の男が妻を亡くし、彼女の遺髪を隠し持ち世捨て人同然の生活をおくっている。そこに現れた妻そっくりの女優の登場。しかし、より妻への思いは幻影になって男につきまとい・・・・。という男ロマンを過不足なく描きえるプロット(何たって、ベルギー象徴主義の詩人ローデンバックが、自作の小説『死都ブリュージュ』を改作した戯曲『幻影』に基づいてます)を際立たせる、死や幻影、あの世感覚が、とことん甘美でメランコリックで、美メロの大群の波にて紡がれていくのです。バイオリンほかの楽器とソブラノが絡んでいくポリフォニー感覚なんぞの聞き味もあってもの凄くカッコいい。

他の音楽ジャンルで言えば、フランク・ザッパやスティーリー・ダン、トッド・ラングレンなんかのちょっとツィステッドで迷宮感のあるアレンジセンスを感じさせるオペラ。食べ物で言ったら、なれ寿司とかメキシコ料理のポージョ・デ・モレ(チョコレートソースのトリ煮込み)などの複雑美味系ですよ。

 モレ(チョコレートソース)で思い出しましたが、これ、ブルージュの冷たく灰色な都市の借景に展開される物語なのですが、所々に南米、ニューオリンズ的なカーニバルのエッセンスを入れてくる演出も面白かったですね。(実際、音楽もそういった和声の響きを所々に効かせてました)。

演出としては、舞台のホリゾントいっぱいに、「豊かな髪の毛を振り乱す妻のスローモーション幻影」が写真のブラチナブリントのようなテクスチャーで展開していくところが、まあ、よかった。シンプルなアイディアですが、非常に効果的。この演出家、絶対、ビル・ヴィオラらへんの現代美術のビデオ作品を参考にしているだろうな、と。そう、日本と違って、オペラ演出と現代美術には激しく人や情報の往来がなされているなあ、というのが、感想です。

小さい街なので、アフターの飯屋は数少なく、どーでもいい感じの店に入ったら、なんとそこはオーストラリア料理専門店。ダチョウのステーキを食べる気も無く、オーストラリアなら中華っしょ、というわけで、ライスヌードルの焼きそば風を頼んだら、とてつもない塩っ辛さで口の中が「死の都」に!!!! 遠くでカウボーイハットを被った店員が、エレビを引きながら「カントリーロード」を歌っているのを聞きつつ、この予想外のツイステッドなデカダン感覚を堪能した夜でした。

翌日は、ドレスデン城の宝物館にスタック。いやー、ザクセン選帝侯が財力と眼力にモノを言わせた、バロックとルネッサンスの宝物の数々。もう、欲しいものだらけで、時空を越えてすり替われるのならば、私はザクセン項の片腕となって買い物三昧の手先になりたいですよ。このころのデザインは、自然素材と金属、鉱物といった組み合わせのセンスがあり、これってまんま、今なんですよ。甲冑のコレクションも凄くてもう、ここに住みたいぐらい。

美と物量にやられまくったのか、帰りの石畳でコケて膝に重傷をおったのでした。

 

 
湯山玲子公式サイト © 2011 DheTemplate.com & Main Blogger . Supported by Makeityourring Diamond Engagement Rings