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2018年4月6日金曜日

2018年4月6日

映画『娼年』。とうとう、次の日曜日公開です。
最初に言っておきますが、これ必見です。「女性が自らの性欲を認め行動しはじめた時代の男女の関係性は?!」といった切迫した社会性からも、また、セックスを中心軸において、どれだけ人間とその感情が描けるか、という密室劇の映画表現としての破格の上手さ(これを観ると、やたらと文化人が持ち上げる日活ロマンポルノの方向性がいかに「男ロマン」の枠の中で終始していたかがわかります)からも、俳優達の素晴らしさからも(松坂桃李はいわずもがなですが、クラブオーナーの真飛聖が素晴らしい!!)、昨今の日本映画の中では突出した名作。

セックスをド正面に据えた作品は、もちろん数は多くなく、ベルトリッチの『ラスト・タンゴ・イン・パリ』、大島渚の『愛のコリーダ』、ラース・フォン・トリアーの『ニンフォマニアック』などが思い出されますが、『娼年』とこれらの作品に共通なものは、エロスファンタジーに逃げない「人間にとってセックスとは何ぞや?! 」という問い。メイクラヴ(愛を創造する)という言葉がある欧米キリスト教文化圏と、儒教的な男尊女卑における男女の高低差と、快楽&遊戯&ファンタジーの色合いとのハイブリッドな日本のそれ、など、文化の違いはあれど、その本質に関しては、未だ謎。それは、セックスが個人的体験で、決して伝承されるものではない、ということにつきるのですが。


ちなみに、試写をいっしょに観た、50代の辛口文化系女、吉岡ひろみとその後の飲みの席で、お互いが思わず口走ったのは「久々にセックスしたくなりましたぜ」だったわけですわ!!!!!!!!!!!

そう、この映画、女性向けが氾濫するエンタメコンテンツの中で、実はこういった性愛関係だけがまだ未開拓のプルーオーシャンだったということにも気づかされました。これが原作、石田衣良、監督、三浦大輔という男性タッグによってなされたことが、悔しいところではある。(このあたりは、この後掲載される、デジタル朝日に連載しているインタビュー「オトコ解体新書」で三浦大輔監督にインタビューしているので、乞うご期待)

この映画が興味深いのは、女性は絶賛(「テレクラキャノンボール」系に男といっしょに笑う名誉男子以外の)、男性はスルーもしくは酷評という温度差が大いに予測されるところ。なぜなら、この映画「男は松坂桃李(演ずるところの主人公ですが)だけでいい」という男性を最も苛立たせる、女の欲望の本質が浮き彫りになってくるからです。

ちなみに、これ拙書「男をこじらせる前に」(kadaokawa)の中の「男は坂本龍一だけでいい」という一章とシンクロ。私の周囲には、経済力を持って自立している中年女性が多数いますが、結婚しないと子供が作れない現実や、結婚していても大変に貧しいセックスライフ、コミュニケーションを拒否し全く寄り添おうとしない夫などはもうもう愚痴の定番。

しかし、それらのお悩みも精子パンク→シングルマザーの一般化とこの作品の主人公のような存在がいれば、一発で解決なのですが、そうなったら、選ばれない男性はもう全く立つ瀬が無い。立つ瀬の無い男性は社会を不安定にする最大要因になるので、結婚という一夫一婦制が必要だという説になるのです。

物語は、女性専用の秘密裏のコールボーイクラブにスカウトされ、娼婦ならぬ娼夫となった主人公が、顧客の女性とのセックスを通して、性欲の深淵に触れ、一流の(マジで)娼夫となっていくという一種の成長譚。石田衣良の原作には、それこそ「女性の欲望の広くて深い多様性」が様々に書かれていますが、その中から6つのエビソードが選ばれています。

だだ今、日本はこの数年やっと、女芸人の大久保佳代子が「性欲強いですから」と言ってそれが笑いになり、オナニーに関してもオーブンになってきましたが、まだまだ表層的。特に「このババア、何色気づいているんだ」的な年齢を重ねた女性のそれに対する侮蔑や、AVに当たり前に存在する「女性を侮辱し、マウンティングしてサカる」といった力学の前に、女性は自らの性を抑圧しているわけですが、この映画はそれらを大肯定(それも、松坂桃李サマにて)。江波杏子演じる、70代女性のエレガンス・セックス(の入り口描写ですが)に、勇気づけられる女子は多いはずですよ。

ちなみに月曜日に行われたブレ試写会では、わたくしが司会を担当して、原作者の石田衣良さんと、監督の三浦大輔さんとのトークショーがありました。「話したりないよ!!」となったので、もしかしたら、近々にもうイチセッションあるかもしれません。

あっ、あと、全編を彩る、半野喜弘の音楽が抜群にいい。セックス=夜の快楽を伝える、テクノ・ブルース。随所にボサノヴァを入れ込む手つきなど、よーくわかってますわ、この御仁。「ラスト・タンゴ・イン・パリ」のガトー・バルビエリを思い出します。

 
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