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2019年2月12日火曜日

2019年2月12日


稀代の指揮者、テオドール・クルレンツィス&コパチンスカヤ&ムジカエテルナの来日公演、2日目が終わりましたが、はっきり言ってもうヘトヘトですわ!!! 何でかって? そりゃ、自分の集中力、感性、感情、知力を騒動員したからですよ。それほど、凄かった。凄くて、超越的なエネルギーだった。クリエイティヴに関するエネルギー問題は、今、一番語らなければならない案件で(なぜなら、それは高度消費社会では枯渇するようになっておるのだ)、もうもうその素晴らしい結果を体験したというヘトヘト・・・。

感動しつつ、分析しつつ、頭の中に光速でよぎっていく思考の断片を観察していく、という。今年に入ってから、妙に考え続けている「音楽に何ができるか」「音楽にできること」ということの、ひとつの大きな成果を目の当たりにした、という感じ。はっきり言って、これ級の演奏ならば、メンフィス命のブルース愛好家も、YMOフリークも、テクノ命のクラバーも、クラシック音楽、交響曲の魅力にたたき込む事ができるというものです。

2日連続で、コパチンスカヤ参戦のチャイコフスキー『ヴァイオリン協奏曲』。この極甘フレーバーの導入メロを彼女は、弦を浮かせる感じで淡々と展開するのですが、その「薄情さ」の温度がも・の・す・ご・くこの曲の、独特のメランコリーを現していて絶妙。そして、その彼女が繰り出す質感とオケ全体が全く同質。

それはクルレンツィスの企てでもあるわけですが、指揮者にも、オケのメンバーも、ソロの彼女も、ひとつの生物の各部位のように同じ体温、血潮がめぐっているような一体感そしてとてつもない生命観はいったい何なんだよっ!!! !! 弦のポウイングの途中からの、ステレオのボリュームつまみを少量上げるような音量の上げ方であるとか、恐ろしく上手いクラリネットを含めた木管8人衆の音響的使い方とか、コパチンの光速アレグロの粒立ちだとか、全く隙の無いディテールの積み上げは、クルレンツィスという指揮者が開いた、チャイコフスキーの創造世界にたどり着くためのひとつひとつのステップなのです。

そして、交響曲第6番「悲愴」ですよ。チャイコの交響曲は金管楽器の華やかさ、重厚さが魅力のひとつだと思っていたら、クルレンツィスの発想は違った。だって、このムジカエテルナ、金管はすべて2管なのですわ。木管と同レベルの金管、しかし、その迫力部分を置換補填しているのがななんと、ヴァイオリンのピチカートのトッティーなんですよ!!!!! センスが問われる第四楽章の冒頭、慟哭のイントロ(爆クラでは、お笑いネタww)ですが、ここでの演奏は、生きている人間なら必ず心の中に秘めている「悲しみ」感情の最大級、の見事な音楽化といったもの。フォーククルセイダーズの「悲しくてやりきれない」で歌われた、悲しみの先にある、脱力のようなある種明るい「諦観」のようなところに触れてくるわけです。

本日はチャイコフスキーの交響曲第4番。冒頭からの金管の華やかなアンサンブル責めを、どう彼が料理するのか?! に興味津々でしたが、これ、ホルンを右奥に寄せる配置のステレオ効果と、バランスの良さで、音量とパワーではない絶妙アンサンブルで軽々と乗り切ってました。木管と同地平の金管の位置づけ。この感覚は、サンプリングを得意とするエレクトロの作家と似ているかも。この曲、別段面白くない曲なのですが、音量のレイヤーの細かさによる「同じフレーズなのに違って聞こえる」系の仕掛けの妙でぐいぐい引き込まれました。

これだけ、個性的でありながら、そこにチャイコフスキーをオレ色に染め上げる、というエゴが全く見えないところもナイス。これはコパチンスカヤも同様で、私たちは彼らを通して、やっばりチャイコフスキーというひとりの創造者と深く関係している、という境地。ここだよね。クラシックのヤバいところは!!

それで、ここが忘れてはならんことですが、このムジカエテルナ、クルレンツィスの私設オケだと言うこと。要するにバンド。バンドだから、何度も時間をかけて練習し、演者同士の呼吸が合う。アマチュアオケにこそ、この可能性がある、と私はさんざん言ってきているのですが、そこにはリーダーである指揮者の、力量が問われるわけで・・・。ちなみにその力量とは、どれだけ音楽を思考、思索しているか、ということにも関係する。それには、クルレンティスのCDに治められているブックレットにある彼の寄稿文を参照のこと。

実はこういった創作集団のあり方は、同時代性があって、我が国では京都を本拠地に時前のシアターで、上演を続ける演劇集団<地点>なんかそのタイプ。と同時にクルレンツィス、その手つきは、演出家のよう。ギリシャ悲劇、シェイクスピア、などをテキストに、現代に喚び生ける演出は、彼が音楽でやっていることと似ている。

初日のレセプションで、コパチンスカヤとちょいとご歓談。私のメガネを凄く褒めてくれて、今になって差し上げればよかったなあ、と後悔。猫っけのある超カワイイ人でした。


 
 
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